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大規模言語モデルとの統合で進化するGoogleの汎用ロボット開発の現状

2022.11.29先端技術

大規模言語モデルとの統合で進化するGoogleの汎用ロボット開発の現状

かつてはロボットと言えば、工場で稼働する産業用ロボットや玩具ロボットのような用途が限定されたものでした。2010年代に第三次AI革命が起こったことで、ロボットに画像認識や自然言語処理のような機能が実装されるようになり、その用途が広がりました。こうしたなか大規模言語モデル開発に熱心なGoogleは、ロボット開発を新たな次元に引き上げようとしています。本稿では、大規模言語モデルを実装することで汎用ロボットの実現を目指すGoogleの取り組みを紹介します。

アフォーダンスを考慮してタスクを決定

Googleは2022年8月15日、大規模言語モデルを実装したヘルパーロボット「PaLM-SayCan」に関する記事を公開しました。このロボットの革新性は、大規模言語モデルを実装することで自然言語による指示に柔軟な対応ができるようになったところです。

周知のように現在の大規模言語モデルは、曖昧さをふくんでいる自然言語をかなり理解できるようになりました。例えば「(アメリカの)ダラスで一番おいしいレストランとは」という質問に対して、ダラスにあるレストランの価格や料理等を考慮して答えられます。こうした大規模言語モデルをロボットの制御に活用すれば、自然言語による指示を理解できるロボットが実現するのではないか、とGoogle研究チームは考えました。そうして誕生したのが、PaLM-SayCanです。この名称にふくまれているPaLMは同社が開発した大規模言語モデルの名前であり、パラメータ数は5,400億と世界最高峰です。

PaLM-SayCanは、以下のような手順を実行して自然言語による指示を実行します。

  1. 手順1.タスクの理解:自然言語による指示にもとづいて、最初に実行可能なタスクをリストアップする。例えば「おやつを持ってきて」という指示に対して、「バナナを探す」「キャンディーを持って行く」といった指示の遂行につながるタスクを挙げていく。列挙したタスクには、指示遂行につながる度合いを示す言語スコアが付与される。
  2. 手順2.タスクの絞り込み:手順1で列挙したタスクは、そのすべてが実行可能なわけではない。バナナが近くにないのに、バナナは探せない。それゆえ、タスクの実行可能性を評価する必要がある。この評価に使われる指標が、アフォーダンススコアである。アフォーダンスとは生体心理学の用語で、環境が行動主体に対して与える「意味」のこと。
  3. 手順3.実行タスクの決定:手順1でリストアップされたタスクに関して、言語スコアとアフォーダンススコアを合わせて評価して、もっとも指示遂行につながるタスクを決定する。
  4. 手順4.指示完遂まで反復:簡単な指示の場合、単一のタスクで完遂となる。複雑な指示の場合は、完遂までに必要なタスクを複数設定したうえで手順2と手順3を指示完遂まで繰り返す。

以上のように指示に対応するPaLM-SayCanは、既存ヘルパーロボットと比較して指示を完遂するまでのタスクを設定する能力が14%、簡単な指示を完遂するタスクの実行能力が13%、8つの以上のタスクの実行が求められる複雑な指示に対するタスク計画能力にいたっては26%向上しました。

コード自体を生成するロボット

PaLM-SayCanの成果をふまえてGoogle研究チームは2022年11月2日、新たな設計思想にもとづいた汎用的ロボットを発表しました。このロボットの特徴は、大規模言語モデルが持っているコード生成機能を動作の制御に利用することにあります。

GPT-3の登場以降、コメントを渡すとそのコメントの内容に則したコードを生成するAIが多数リリースされました。こうしたコード生成AIのなかで代表的なのがGitHub Copilotです。同AIは、現在ソフトウェア開発のシーンで利用されています。こうしたなかGoogle研究チームは、自然言語の指示を受けてタスクを実行するロボットの動作制御に対して、コード生成AIを活用したのです。「方針としてのコード(Code as Policies:略してCaP)」と命名されたこの活用法においては、コードを生成するために渡すコメントに相当するのがタスクの指示となります。例えば「四角の枠の真ん中にブロックを並べよ」という指示に対して、CaPを実装したロボットはこの指示を実行するコードを生成した後にそのコードに従って動作します。

 

 

「速く」「もっと左に」といった曖昧な自然言語表現をふくむ指示については、CaP実装ロボットは指示が与えられているコンテクストに応じて常識的に解釈して、具体的な動作速度や移動座標を割り当てます。

以上のようなCap実装ロボットについて、従来のタスクを強化学習するロボットと性能比較を行ったところ、前者のほうが多様なタスクに対応できるうえにタスクを実行するパフォーマンスも向上することがわかりました。この比較結果はロボット制御においてCaPを実装すれば、タスクに関する強化学習を実行する必要がなくなることを示唆しています。

ロボットの汎用性とモデルサイズの関係

Google研究チームは、CaP実装ロボットの汎用性を測定するテストも行いました。このテストは、タスクの遂行能力をさまざまな観点からスコア化するというものでした。そうした観点には既知の部品を組み替えて新しい配列を形成する能力である「系統性(systematicity)」、複雑なタスクを実行するコードを生成する能力を問う「生産性(productivity)」といったものがありました。

以上のような汎用性測定テストをCaP実行モデルのサイズを変えながら実施したところ、一般にモデルサイズが大きいほど汎用性が高く、とくに生産性においてはモデルサイズに起因する性能差が大きいことがわかりました。以下のグラフで「cushman」と表記されたスコアは小さいサイズのモデルのスコア、「davinci」と表記されたものは大きいモデルのそれを表しています。グラフのもっとも右側の「Productivity(生産性)」においてCushmanとDavinciの差が大きいことが見て取れます。

CaPは、強化学習によって進化してきたロボット開発に新しい研究領域を追加するイノベーティブな技術と言えます。もっとも、現時点で同技術によって実行できるタスクは、単純なものに限られます。「積み木の家を作る」のような人間の幼児でも出来るようなタスクをまだ実行できないのです。CaP実装ロボットが実行できるタスクを増やすためには、ロボットが実行できる基本動作を増やすことが考えられます。

以上に紹介したGoogleのロボット開発は、今後さらに進化することが予想されます。というのも、同社は大規模言語モデル開発を得意としているので、この分野での研究成果が早期にロボット開発に反映されると見込まれるからです。それゆえ、汎用ロボット開発をけん引する企業として今後ともGoogleから目を離せないでしょう。

Writer:吉本幸記、Image by Google

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