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【GTC 2022】リサイクルや農業、養蜂で活躍。サスティナビリティ支援AIレポート

2022.4.21先端技術

【GTC 2022】リサイクルや農業、養蜂で活躍。サスティナビリティ支援AIレポート

2022年3月21日から24日、NVIDIAは開発者会議GTC 2022を開催しました。24日には「AIによる環境的サスティナビリティの実現」というパネルディスカッションが行われました。本稿ではこのディスカッションで語られたサスティナビリティ支援AI事例を紹介したうえで、こうしたAIが果たす社会貢献を明らかにします。

1シーズンで100万リットルを節水した事例も報告

以上のパネルディスカッションは、リサイクルにAIを活用する企業Recycleyeで機械学習技術リーダーを務めるベネデッタ・デルフィーノ氏が、各パネリストに質問して答えてもらうという形式で進められました。最初の質問では、AIによってどのようにサスティナビリティ(持続可能性)を実現するのかについて、各パネリストが所属する企業の取り組みを尋ねました。

AIによるリサイクル促進に取り組むVeoliaのディレクターであるティム・デュレット氏は、イギリスとアイルランドの廃棄物事情とAIによる廃棄物削減について話しました。この2か国は、合計で年間約2億トンの廃棄物を排出しています。廃棄物排出量を減らすには、リサイクル率を上げなければなりません。リサイクル率を上げるのに役立つのが、廃棄物を識別するAIです。というのも、廃棄物を識別して正しく分別できれば、より多くの廃棄物がリサイクルできるようになるからです。

AI駆動型のミツバチの巣を製造するBeewise TechnologiesのCEOであるサアー・サフラ氏は、ハチの巣と環境の関係について説明しました。ミツバチは、地球上に生育する作物の75%の受粉に関わっています。農業に多大に貢献しているミツバチの巣を守ることは、サスティナブルな農業を実現するうえで非常に意義深いと言えます。ミツバチの巣の崩壊を防止するために、同氏が行っているのはAIが管理するミツバチの巣の開発です。具体的には、巣箱に温度や湿度を管理するAIを導入して、巣を最適な状態に保つのです。この巣箱には、害虫を駆除するロボットも実装されており、遠隔管理も可能です(以下の画像参照)。

AIによる農薬散布効率化に取り組むBilberryのCEOギヨーム・ジュルダン氏は、同社創業の経緯と事業の成果について語りました。テクノロジーで世界を変えたいと思いから大学卒業後すぐに起業した同氏は、ドローンを使って雑草だけに農薬を散布するアイデアに取り組みましたがうまく行きませんでした。転機となったのは、自動運転車開発の進展を目の当たりにして、ドローンではなく農薬散布機にAIカメラを搭載するというアイデアに変更した時でした。新しいアイデアによって雑草だけを識別して除草剤を噴霧することが可能になった結果、あるオーストラリアの農場では1シーズンで100万リットルの水と3~4万リットルの農薬の節約に成功しました。

オランダ・デルフト工科大学で海岸の保全について研究するサンダー・ヴォス氏は、海岸測量の意義とAIの貢献について話しました。気候変動が進行すれば、約2万8,000平方キロメートルの海岸が消失するかも知れない、と考えられています。海岸消失を回避する第一歩として、海岸の継続的な測量が重要となります。広大な海岸を継続的に測量するために、同氏はAIカメラを搭載した自動測量システムを開発しました。この測量システムは、測量する周期を自由に設定できるように設計されています。

サスティナビリティ支援AI開発における難点とその克服

モデレーターのデルフィーノ氏は、2つ目の質問としてサスティナビリティ支援AIシステムを開発するにあたり、直面した難点とその克服方法について尋ねました。

Bilberryのジュルダン氏は、雑草識別AIの学習データを収集する難しさについて話しました。雑草は日々成長しているので、生育段階が異なれば見た目が変わります。日々刻々と変化する雑草を正しく識別するためには、雑草に関する大量の画像データが必要になります。こうした問題を解決するために、同氏は雑草の画像データを1年中収集するための人材を雇用しています。

Veoliaのデュレット氏は、廃棄物を識別する困難について語りました。例えば、牛乳瓶を識別するAIを開発した時には、牛乳瓶とよく似た洗濯洗剤の瓶を区別するのに苦労しました。また、廃棄物は材料等を明記しているラベルが破損していることがほとんどで、形状もつぶれていることが少なくありません。それゆえ、廃棄物として捨てられる前の製品に関する画像を学習しても、廃棄物の識別にはあまり役に立たないのです。こうした問題を解決するために、同氏は廃棄物に関する学習データセットを作成しました。

廃棄物に関する学習データセットに関しては、モデレーターのデルフィーノ氏が勤める企業Recycleyeが、「WasteNet」を公開しています。このデータセットは廃棄物に関する300万以上の画像から構成されています(以下の画像参照)。

Veoliaのデュレット氏は、廃棄物リサイクルに対するデジタルツインの有効性についても話しました。廃棄物のリサイクルは、廃棄物が排出される状況に応じて処理過程を変更しなければなりません。例えば、新製品がリリースされれば、その製品を識別する処理が必要になります。最近ではコロナ禍によるライフスタイルの変化により、家庭から排出される廃棄物の組成が大きく変わりました。こうしたなか、廃棄物リサイクルの処理過程に関するデジタルツインが構築されていれば迅速に変化に対応でき、さらには大きなライフスタイルの変化に伴う廃棄物の変化を予測することも可能となるのです。

1セントで2.4匹のミツバチを救える

デルフィーノ氏は、最後の質問としてサスティナビリティ支援AI開発の意義をどのように説明するか、と尋ねました。

Beewise Technologiesのサフラ氏は、ミツバチをめぐる現状について再度語りました。前述のようにミツバチは世界の作物の75%の受粉に関わっている一方で、毎年35%のミツバチのコロニーが失われています。こうした数字から、ミツバチの巣の保全が緊急の課題であることがわかります。同氏が開発したAI駆動型のミツバチの巣を導入すれば、1セントを費やせば、2.4匹のミツバチを救える計算になります。

デルフト大学のヴォス氏は、海外消失が与える影響を語りました。もし現在のペースで海岸が消失してしまった場合、海抜が低い地域に600~700万人が住んでいるオランダでは、多くの住民が転居を余儀なくされると考えられます。また、海岸消失はオランダだけではなく、全世界が影響を受ける問題です。こうした問題に対して、同氏はアメリカ、ベルギー、ドイツなどの世界各国の大学と協力してAIによる海岸の測量を推進しています。

以上のようにさまざまなドメインで活躍しているサスティナビリティ支援AIは、今後さらに多くのドメインで活用されるようになるでしょう。そして、こうしたAIの活躍が世界的な潮流となれば、気候変動に歯止めがかかるかもしれません。

Writer:吉本幸記

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