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【JSAI2020】最も大切なのは想像するということ:中島秀之氏基調講演(後編)

2020.7.16サイエンス

【JSAI2020】最も大切なのは想像するということ:中島秀之氏基調講演(後編)

第34回人工知能学会全国大会(JSAI2020)初日に行われた基調講演では、札幌市立大学学長の中島秀之氏が登壇しました。前編では日本政府が提唱する「ソサエティ5.0」をふまえて人間社会の進歩の歴史を辿り、その延長に中島氏の提唱するソサエティ5.1を位置づけました。後編となる本稿では、AIとITを融合させたAITを活用した社会の予想図から、現在社会実装されているAIを活用したサービスの事例、機械学習の限界を超えるために中島氏が提唱するハイブリッドアーキテクチャについてのお話をお届けします。

【JSAI2020】AIと共に生き、AIを生かす社会のデザイン:中島秀之氏基調講演(前編)

第34回人工知能学会全国大会(JSAI2020)初日に行われた基調講演では、札幌市立大学学長の中島秀之氏が登壇し、IT技術の進化の流れの中で捉えたAIの歴史を紐解きながら、AIを活用していくことで変容していく社会の可能性について語りました。

AIと共に生き、AIを生かす社会のあり方とは

まず中島氏は、AITの活用により将来実現できる未来予想図を示しました。

図12:働き方、社会、経済、教育が変わる(中島版ソサエティ5.1)

組織および働き方のマネジメントの変化について、現在行われているテレワークの進化版として、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行が考えられます。例えばテレワークで仕事をすることで1人が10社からの仕事を引き受けることも可能になります。社員という概念が徐々になくなっていき、あるミッションを行うための集団に変わっていくことが予想されるため、それに沿った仕組みを考えなければならないと中島氏は言います。

社会的意思決定システムである政治もオンラインを活用した選挙や議会に変わっていくべきでしょう。経済システムも然りで、今もすでに資本主義からシェアリング経済への移行は始まっています。また、現在は仕事があることと収入があることが1対1に対応していますが、今後はAIに仕事を奪われても困らない世界を考えていく必要があります。そうした社会システムに変えていくことで、仕事がなくても普通に暮らすことが可能になるかもしれません。

教育もマス教育から個別教育へ視点を変えていくことで可能性が広がっていくはずです。現在はCOVID-19の影響でオンラインでの授業が否応なく始まっていますが、オンラインであれば物理的制約を越えて好きな講義を受けることも可能になります。もちろん教育のすべてをプログラムで引き受けるわけにはいきませんが、専門知識を教えることは可能です。

さらに言えば、新しいオンライン教育システムが生まれてくる可能性もあります。今はZoomなどのツールを使って講義を配信しているだけですが、よりインタラクティブにしたり個別に対応する方法も開発できるはずです。中島氏はニール・スティーヴンスンのSF小説『ダイヤモンド・エイジ』に出てくる絵本の話を例に出し、その可能性を示します。

物語に登場するその絵本はプログラムでできていて、最初は小さな子どもに読み聞かせるためのシンプルな内容です。それが、読者である子どもの成長に合わせて物語が変化していくため、その本1冊で子どもが大人になるまでの教育ができるのです。最初は「王子様と出会って幸せに暮らしました」といったおとぎ話ですが、子どもが成長するにつれて悪者が出てきたり、社会問題が関わってくるなど、段々と物語が複雑になっていきます。そのように子どもの一人ひとりの成長や発達に沿って教育することが、将来的には可能になるだろうと中島氏は語ります。

次に、現在中島氏が関わっている進行中のプロジェクトの紹介がされました。

健康脆弱化の予知予防

中島氏が会長を務める理化学研究所の健康脆弱化予知予防コンソーシアムは、高齢者の心身の脆弱化を予測することで、健康寿命を延ばすことを目指しています。そのために健康診断結果をふくむさまざまな計測データを蓄積・解析し、本人にフィードバックする必要がありますが、現時点では個人情報保護法が壁となり、各都道府県が持つ計測データの共有ができないという課題があります。現在はそれを改善するため、データ循環研究会を作って必要な時に個人データを企業に渡せる仕組み作りを行っています。

図13:健康脆弱化の予知予防
図14:データ循環の仕組み

個人データをすべて個人が持つことができれば必要に応じて第三者に渡すことができます。データ循環研究会は、それをシステムとして支援します。ほとんどのことはパーソナルAIエージェントが代理となって処理し、ユーザーは基本的に方針だけ示しておけば良いという仕組みが実現されれば、すべてのユーザーの健康診断データがシェアでき「あなたのデータと似た人は数年後にこのような病気になっています」ということも分かるようになります。

公共交通サービスのクラウド化

コンピュータシミュレーションを応用することで公共交通をクラウド化するプロジェクトも紹介されました。中島氏が取締役会長を務める株式会社未来シェアのSAVSは、実証実験が行われている都市内のバスとタクシーをクラウド化して制御することで、ユーザーが目的地を指定すれば最適な移動手段がレコメンドされるサービスです。

図15:公共交通サービスのクラウド化

これは2014年にフィンランドから始まったモビリティをひとつのサービスとしてとらえるMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれる概念から始まったサービスで、移動は目的ではなく手段であるという考えが基本にあります。クラウドとAIを介してユーザーと目的地をシームレスにつなぐことで利便性の高い生活を実現しようというビジョンに基づいています。

図16:2014年にフィンランドで生まれたMaaSの概念。電車、バス、タクシーなどの既存の交通手段をモビリティプラットフォームでカバーしているためユーザーはプラットフォームとコンタクトするだけで目的地にたどり着くことができる

ここで中島氏が興味深いデータを示しました。下記の図17はドコモによる実証実験のデータで、これまでの公共バスの定運行とAI運行を導入した際の住民の活性化を示したものです。

図17:ドコモの実証実験(神戸つくし地区)。青は従来の定運行バス、赤はAI運行バスの場合の人の移動

移動量が倍になっていることも注目に値しますが、もうひとつ注目すべきは移動人数のピークの山です。従来の運行バスを示すグラフの青線のピークはひとつだけですが、AI運行バスを示す赤線はピークが3つできています。実証実験の現場となった神戸つくし地区はお年寄りと病院が多い地区で、青のデータは午前中病院に行って午後に家に帰ってきておしまいという動きだと読むことができます。一方で赤線の最初の山は青線と同様に病院に行く時のもので、次のお昼頃の山ではランチを食べに出かけ、夕方に買い物にもう一度出かけた時のものと考えることができます。このようにモビリティが便利になることで人の行動がより活発に変わることがデータでも明らかになっています。しかし、ここでも法律が壁になっているのが現状です。

こうした先端技術と法律との関係について、中島氏は、法整備の仕組みと法律の記述に関する米国との大きな違いを指摘します。日本のでは新しい法律を作ったり法改正をする際、国会での審議に長い時間がかかることに加え、やっていいことを法律に記述するホワイトリスト方式を採用しています。つまり、原則として書いていないことはやってはいけないことになっているのです。一方で米国の法律は、やってはいけないことを記述するブラックリスト方式なので、書かれていないことはやっても構わないことになります。これにより、例えば自動運転の走行実験について、米国では公道を走っていますが日本では走れないということになるわけです。

新しい技術を社会実装する際に法律が壁になるという課題について、中島氏は経済産業省省と東大法学部によるガバナンスイノベーションについて言及しました。これは個々の細かい規則を法律で決めるのではなく一段上のレイヤーの趣旨を記述しようというものです。その例のひとつは車検です。2年に1度認定工場に入れることがゴールではなく、本来のゴールは自動車を正常な状態で維持することです。今の技術を使えば、テレメトリーで車の走行状況を取りモニタリングすることでスマートに解決できます。このように、その時の技術に応じて法律を記述すればいいと中島氏は言います。

【関連資料】「GOVERNANCE INNOVATION: Society5.0の時代における法とアーキテクチャのリ・デザイン」報告書(案)

機械学習と記号処理の融合=次世代ハイブリッドアーキテクチャ

最後に中島氏が取り上げたのは機械学習の問題点と、それを補うために構築された記号処理と融合したアーキテクチャです。現時点でも機械学習およびディープラーニングは万能ではなく、過学習や過汎化、騙されやすいといった問題点があります。

図18:機械学習の問題点1。機械学習を意図的に騙すことは可能であることを示す実験。スクールバスの画像認識を学習したAIに、意図的なノイズを加えた写真を見せると、AIはスクールバスの画像をダチョウと判断する
図19:機械学習の問題点2。データが偏っていれば学習結果も偏るし、データとしては正しくとも政治的には間違いであるという言明を理解できない

このような機械学習の限界に対して中島氏が示す解決方法は、より高次な判断、推論を組み合わせることで「予期」を与えることです。ここで言う予期とは、一段上の認知レベルからその結果を降ろしてくることを指します(予測は同じ物理レベルの次の現象のことを指します)。つまりひとつ上のレベルに記号推論を走らせ、今何が見えているかを予期してからディープラーニングを行うということです。

例えば知識を持っているが故に起きる錯視を再現することです。図20に示すチェッカーボードの上の円柱と影の関係を見た時、人間であれば丸で囲まれたAとBの文字を比べた時、Bの方が明るいと感じてしまいます。実際には同じ明るさなのですが、「円柱の影の位置にあたるから暗く見えているだけで、本当はもっと明るいはずだ」という知識と予期を行った結果、錯視が起こっているのです。今のディープラーニングではこの錯視はできず、データとして同じ色と明るさだから「同じだ」と正しい答えを出してしまいます。この時に人間と同じように、知識があるが故の誤解をすることで錯視をするシステムを作りたいと中島氏は言います。

図20:チェッカーボードの上の円柱と影。影があるために、人間は明るさを錯視する

その実現のために中島氏が構想するのが、記号推論とディープラーニングを組み合わせた「ハイブリッドアーキテクチャ」です。基本的にはロドニー・ブルックスのサブサンプションアーキテクチャと同様に色々な層の推論を積み重ね、環境との間のループを回すというものです。前述のようにディープラーニングは過学習や過汎化が起きるため、データから完全な学習をすることができないという課題があります。一方、記号処理にもフレーム問題やシンボルグラウンディング問題、常識推論ができないなど、さまざまな問題があります。どちらも完璧ではないので、両方がうまく補い合うように組み合わせようという発想です。

図21:ハイブリッドアーキテクチャ。オレンジで示すのがディープラーニング、緑色で示すのが記号処理の推論。それらをサンドイッチのように重ねていく

図21で示すように、一番下には実際の世界を認識するループが回り、上から記号処理で割り込みをかけ、さらにその上にディープラーニングのモニターを載せるというモデルです。記号推論で何が起こっているかをディープラーニングに見せておくことで学習するというアイデアです。学習があってその上に推論があり、推論から学習し、その推論からの学習を見ている自分がいる。いわゆる人間の自意識というのはこのようなアーキテクチャの中にあるのではないでしょうか。これらをうまく合わせていくことで、次の世代のハイブリッドアーキテクチャができると中島氏は語ります。そして、最後にアラン・ケイの言葉をもじって「The best way to predict the future is to DESIGN it」という言葉で締めました。

物理的なシステムは物理法則だけでできるとは言えません。現実世界にはさまざまな限界があります。新しいテクノロジーが生まれないと解決できないこともあるでしょう。ところが、情報システムだけに関していうと、そのような法則はありません。原理的に思いつけば必ず作れるわけです。複雑なプログラムを書く能力が人間にないという限界はありますが、思いついたシステムができないということはあり得ません。つまり思いつく、想像するということが一番大事なのだと思います(中島氏)

Writer:大内孝子

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