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AIが数学者の羅針盤になりうる未来は近い:月刊エンタメAIニュース vol.24

2021.12.27先端技術

AIが数学者の羅針盤になりうる未来は近い:月刊エンタメAIニュース vol.24

エンタメにおいても人工知能は日進月歩で発展しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。

AIとはデータの宇宙を見つめるための望遠鏡

インドの魔術師と謳われた数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンは、数学という学問を系統的に学べなかった生い立ちゆえに証明という概念を持たず、その人間離れした直感とひらめきに基づいた数多くの公式や定理で、後世の数学者たちに多大な影響を与えました。1969年にシルヴェスター・メダルを受賞したイギリスの数学者ジョージ・テンプルは、「数学史における大きな前進は、論理ではなく柔軟な発想によって成し遂げられてきた」という言葉を残しています。そして21世紀の現在、私たちが人間離れした直感とひらめきの可能性を見出そうとしているのがAIです。

人間を負かした囲碁AI「AlphaZero」で知られるDeepMindは12月1日、学術ジャーナルNatureに掲載した論文の中で、純粋数学の発展に実用レベルで応用可能な機械学習モデルを発表しました。シドニー大学の協力のもと、順列を扱う未解決問題における新たな公式を発見したほか、オックスフォード大学との研究では位相幾何学の結び目理論に応用することで、数学における複数の異なる分野を関連付ける新たな発見につながったとのことです。

純粋数学における研究の多くは、パターンの発見と証明にほかなりません。20世紀にコンピュータが普及したことによって、人類はパターンの探求に要する膨大なデータにアクセスできるようになりました。このようにコンピュータの計算能力を活用したアプローチは実験数学と呼ばれ、ミレニアム懸賞問題に名を連ねるバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想のような英知の壁は、まさにテクノロジーの進化によって構築されてきました。しかし、実際にデータの海からパターンを探し出し、それを証明するのは人間の役割です。今回のようなAIモデルが、次世代の数学者に欠かせないツールとなる日も近いのかもしれません。

人間の言葉から3Dグラフィックを生成するAI

以前、グループ教師あり学習というフレームワークを使って人間の想像力を再現しようとする研究を紹介しました。AIモデルに赤いボートと青いクルマの画像を学習させることで、赤いクルマの画像が生成できるようになるという内容でした。このようにAIにとって初めて認識するはずのオブジェクトを既知の情報から推論するアプローチのことを、「Zero-Shot学習」と呼びます。人間のイマジネーションとは、まさにこの推論という能力の賜物です。

関連記事:AIに想像力を与えるために必要なこと:月刊エンタメAIニュース vol.19

Google Researchとカルフォルニア大学バークレー校の共同研究チームは、自然言語の情報に基づいた3Dモデルを自動生成するZero-Shot学習のアプローチを発表しました。特筆すべきは、指定した言葉どおりの形状や色に基づいた新たな3Dモデルを生成するために、あらかじめ3Dモデルを使った事前学習を必要としない点です。前述の研究内容に例えるなら、赤いボートの画像も青いクルマの画像も学習させることなく、「赤いクルマ」と入力するだけで赤いクルマの画像を生成してくれるような技術です。

この手法には、同校の研究者が2020年に発表した「Neural Radiance Field」(NeRF)という研究内容が活用されています。Radiance Fieldとは、輝度場と直訳できるとおり、3次元の空間座標に色と密度を関連付けたベクトル場を指します。この密度が高いほど、その座標に物体が存在する可能性が高いことを意味します。あらゆる角度から撮影されたラベル付きの画像データを基にNeural Radiance Fieldを最適化することによって、学習対象の3Dモデルを自動生成するという技術です。

Dream Fieldsと名付けられた今回の手法は、OpenAIが膨大な量のラベル付き画像を基に構築した「CLIP」(Contrastive Language-Image Pre-Training)という画像分類モデルを使うことで、自然言語による入力情報だけでNeural Radiance Fieldの最適化を実現しています。結果、「アボカドみたいなイス」や「ピカチュウみたいなティーポット」のように、現実には存在しないクリエイティブな3Dモデルの自動生成にも成功しています。まさにイマジネーションという言葉が相応しい技術です。

論文:Zero-Shot Text-Guided Object Generation with Dream Fields

AIのブラックボックス問題の解消に向けて

機械学習手法のひとつであるディープラーニングは、自動運転や医療診断、顔認識をはじめとするさまざまな画像処理技術など、多様な分野で実用化が進められる一方で、AIによる推論仮定の可視化が困難なために、ユーザーに対して判断や制御の根拠が明示できないという大きな課題を抱えています。特に高い信頼性と説明責任が求められる制御分野では、人間に理解できない推論は死活問題となりえます。人類が安心してAI技術を社会の根幹に組み込むためには、このブラックボックスを開かなければいけません。

三菱電機は12月14日、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、制御の根拠を明示できるAI技術を開発したことを明らかにしました。各種センサーからの入力に基づいて制御量を直接出力する従来のアルゴリズムとは異なり、推論過程を「センサー値予測」「シミュレーター」「スケジューラー」の3段階に分割することで、制御の根拠や将来の状態をユーザーに明示できる仕組みを構築したということです。

空調機の制御を例にあげると、部屋の大きさや断熱性といった設置環境の物理パラメータをAIが数値化し、在席人数や入出時間といった実働データを学習させることで、センサーだけでは計測しきれない将来における室内熱量を予測できるようになります。この過程が「センサー値予測」です。つぎに、この値を基に「シミュレーター」が設置環境における温度の変化量を計算します。その結果を用いて「スケジューラー」が機器の稼働率をはじめとする最適な制御計画を出力するという流れです。

このようにシミュレーション結果や制御計画を可視化することで、その根拠や妥当性をすべてのユーザーが理解できるようになります。また、機器が正常に稼働しなかった場合にも、予測と実際のセンサー値の乖離を比較することで、不調の原因であるセンサー箇所や物理量を特定できます。これにより早期のメンテナンスや迅速な復旧が可能になるというわけです。同社は今後、社会インフラ設備における早期の製品化を目指すということです。

子どもの絵に生命を吹き込んでくれるAI

メタAIリサーチ(旧フェイスブックAIリサーチ)は12月16日、手書きのキャラクターにアニメーションを追加してくれるAIモデルのプロトタイプを公開しました。子どもが描いたオリジナルのキャラクターが踊ったり、スキップしたり、飛び跳ねたりする様子を親子で楽しめるように開発されたもので、ブラウザから専用サイトにイラストをアップロードするだけで誰でも利用できます。また、出来上がった動画をダウンロードすることも可能です。

人間や動物の写真と異なり、子どもが自由な発想で描いたキャラクターは色も形も千差万別で、AIにとってはとてつもなく複雑な存在です。そこで今回のAIモデルは、人型のオブジェクトを認識するように学習させてあります。入力された画像内に人型、つまりは2本の腕部と2本の脚部、頭部もしくは胴体または両方を有する形状を認識し、それらの接続部分を特定することでダンスやスキップといったアニメーションの生成を可能にしています。

人間の脳は子どもが描いた絵の中に人間や動物、あるいは空想のキャラクターがいた場合、それらが現実世界における形状や色からかけ離れていたとしても、子どもの意図を容易に理解できます。今回のプロトタイプのように、AIが子どもの絵を認識できるように学習させる研究は、人間と同じ視点から世界を認識できるAIの実現に役立つと考えられています。

Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子、Photo by Thomas T on Unsplash 

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