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動画から世界を理解して思い出を管理してくれるAI:月刊エンタメAIニュース vol.15
エンタメにおいても人工知能は日進月歩で進歩しており、新しい研究成果や試みが次々と発表されています。こちらの連載では、過去1か月間、主に海外で公開された注目すべきゲームAIやエンタメAIに関連したニュース、論文などを紹介していきます。
プレイヤーそっくりのゲームキャラを自動生成するAI
3Dゲームにおけるキャラクターエディットといえば、顔面の各パーツのサイズや形状に対応した多くの変数をプレイヤーが手動で調整する機能と、あらかじめ用意された各パーツやテクスチャを組み合わせる機能が主流です。近年では、ディープラーニングを使って3Dフェイスモデルを自動生成するアルゴリズムが多く発表されていますが、そうしたアルゴリズムがゲームデザインに導入された実例はほとんどありません。
こうした技術には、3Dモーファブルフェイスモデル(3DMM)という変形可能なメッシュデータが使われています。一般的な3Dゲームで使用されているメッシュとは幾何学構造が異なることから、消費者向けの実用化には至っていないというわけです。また、既存のアルゴリズムでは人間の顔面を学習するために膨大なテキスチャデータが必要になるため、データベースの構築にかかるコストも大きな障壁になっています。

ミシガン大学とNetease社の研究者が開発した「MeInGame」という自動生成AIは、ディープラーニングを使って単一の顔画像から顔面の形状やテキスチャを予想することで、実物にそっくりのキャラクターグラフィクを自動生成できます。このアルゴリズムは、インプットされた写真データを基に、3DMMと畳み込みニューラルネットワーク(CNN=Convolutional Neural Network)を再構築。その後、3Dモデルをゲームグラフィック向けのテンプレートメッシュへ変換できるように設計されています。
既存の自動生成アルゴリズムによって作られたキャラクターグラフィックと比較して、圧倒的に高い精度で任意の顔画像に似せられることも実証されています。もしかしたら近い将来、カメラに写る顔をAIが瞬時に分析して、プレイヤーにそっくりの3Dアバターを自動生成してくれるキャラクターエディットの機能が実現するかもしれません。
人間にとって魅力的だと思える顔画像を自動生成するAI
どんな顔を魅力的と感じるかは、個人の好みや文化的な背景によって大きく異なります。それゆえ、魅力という概念をAIに学習させることは極めて困難です。そんな中、ヘルシンキ大学とコペンハーゲン大学の研究者が、人間の脳波を読み取ることでその人が魅力的だと考える顔画像を自動生成するブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)の開発に成功しました。
この研究には、複雑なデータ分布を模倣できる敵対的生成ネットワーク(GAN = Generative Adversarial Neural Network)という技術が使われており、魅力的な顔という概念を特定のパラメータで定義することなく、被験者がサンプルの顔画像を見た際の脳波から主観的な嗜好をモデリングしています。これにより、個人が魅力的と捉える顔の特徴を構成していくという仕組みです。
今回は30人の被験者を対象に、GANを使って架空の顔画像を自動生成。これらの情報を被験者に伏せた状態で、今度は生成された顔画像を見せた際の脳波を読み取った結果、その人にとって魅力的な顔をAIが高い水準で学習していることを確認できたということです。
こうした研究は、個性や感情といった概念に対する認知プロセスを可視化するためのツール開発に役立つ可能性を秘めています。将来的には嗜好のモデリングだけでなく、無意識に表れる人間の態度や意思決定を理解する上で大いに役立つかもしれません。
無数の投稿動画から世界そのものを学習するAI
人間は周囲を観察するだけで場所や人、その行動に関する情報を即座に認識して学習できます。そうした人間の知能がなせる特権をAIに模倣させようという試みが、自己教師あり学習の研究分野で着々と進められています。これまでのように人間が用意したラベル付きのデータではなく、現実世界に散らばっているワイルドな情報を自立的に学習させることで、AI開発の新たな扉を開こうとしているのです。
フェイスブック社が発表した「Learning from Video」(ビデオ学習)というプロジェクトは、Facebookに投稿されたユーザーの公開動画にふくまれる、すべての視覚情報と音声情報を自立的に学習できるAIを設計するというものです。この研究は、類似コンテンツを提案するレコメンド機能の精度向上や、特定のワードやフレーズから過去の写真や動画を容易に探し出せる機能の実装に、大いに役立つことが期待されています。
Instagramで短尺動画をシェアできる「リール」(Reels)のレコメンド機能には、この技術がすでに応用されています。ここでは「一般データ変換」(GDT=Generalized Data Transformations)という手法を使って、動画内の音声と画像の関係性をAIに学習させています。例えば、拍手する観客の画像と喝采の音、離陸する飛行機の画像とエンジンの轟音といった具合に、視覚情報に音の特徴を紐付けます。これにより外見や音声の類似性に基づいた動画をユーザーに提案できるというわけです。
自分のアルバムから特定のキーワードにマッチする写真や動画だけを取り出す際にも、日時や場所といった従来のラベル以上の情報が必要です。例えば「祖母にバースデーソングを歌った時の動画」をすべて探したい場合、AIはバースデーソングのフレーズをケーキやキャンドル、人間が歌う様子と関連付けて学習しなければいけません。
動画は断片的な視覚情報の連続体です。ここでは毎秒ごとのクリップに分割してから、CNNとAttention機構を使って分析することで、それぞれの画像と音声が持つ情報の構成要素を抽出しています。なお、音声クリップにはスペクトログラムを生成します。動画のタイトルや説明といった文字情報は、これらのクリップと直接照らし合わせることはできません。したがって、Transformerと回帰型ニューラルネットワークで単語ごとの意味情報を抽出した後、最後に動画情報と文字情報を比較しています。
スマートフォンの普及によって、いまや写真や動画は誰もが気軽にアクセスできる外部記憶装置として、人々の日常に寄り添うツールになりました。今後、AR眼鏡のようなウェアラブルデバイスが同様に普及した時、デジタル化された思い出へアクセスするのに、もはや手を使うこともなくなるかもしれません。そうした未来では、写真や動画が持つ情報を人間と同じように理解できるAIツールの登場が、パラダイムシフトとなるに違いありません。
Writer:Ritsuko Kawai / 河合律子、Imaga by Facebook AI